嘘はときには星降らす

from atelier anmo

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ある夏の日の午後  

hokkaidou yama


花ごころのある人になりたい。


と最近よく思うようになった。

野花でもいいから、
さっと摘んだものを、
一輪挿しにしてみたり、
季節の花を何気なく飾れるような
そんな人になりたいのだ。


まだ僕がお勤めをしていた頃の話である。

僕は雑貨屋の店員をやっていた。

店では入り口の前に毎日植物を飾っており、
それについて、特に担当を設けていたわけではないのだが、
女性スタッフや、店長が近くの花屋で植物を買ってきて
きれいに活けていたのである。

たまに来るお客さんからは
「入り口のあれ、きれいねー、なんていうの?」
「あれはバラ科の花でー、、、割と日持ちもしていいんですよー」

と、ほかのスタッフが説明しているのを
僕も一緒になって、「へーなるほどねー」、
なんつってアホウの様な面でにやにやしているばかりで、

僕が聞かれても
「ねーきれいっすねー、なんつーんでしょうねー、ははは」
と答えるのみ。

ある日、
店長も女性スタッフもおらん時があって
僕が一人で店をみる日があった。

一通り掃除を終え、オープン間近になったとき、
ふと入り口をみると、花が枯れており、
いかんことになっていた。

誰か、花買ってきてー、といいたいところだが
あいにくこの日は前半僕一人。
仕方がないので僕が買いに行かねばならない。

花屋は歩いて一分ほどのところにあるので
急げばオープンまでに間に合うであろう、
僕はしゃっと店を飛びでて花屋へと向かった。


花屋にはたくさん花がある。
んなこたーわかっている。
わかっているのだ。

問題はどれにするかである。
ひとしきり店内を見てみたが、正直ちっともわかんない。
こまったちゃんですねー、はは

うーん
どれもいいように見えてくるし、
どれもいまいちな気もする。

そうこうするうちに、
だんだんどれでも一緒か、
と思うようになってきた。


そうか、一緒か。


一緒なら日持ちするのがいいはずだよね。

そいだら、
店員さんに聞いてみて、
日持ちするのを選んでみよう。

これ賢明な策である。


「日持ちするのってどれっすかねー?」
「今はねー、暑いから、どれも持たないから
 葉っぱものなら比較的持ちやすいですよ」

なるほど、緑。
いいじゃないか。
さわやかに緑でいってみるか
ていうことで、中でも一番丈夫そうなやつを選び、

「これって日持ちしますかねー?」
「ああ、それ?しますけどねー」
「じゃあね、これで」
「いいんですか?何本にします?」
「五本くらいかなー、ボリュームほしいしね」
「かしこまりました、じゃあ用意しましすねー」

いっすねー、いっすねー
早速、かざりましょう、そうしましょう、
持ち帰り、花瓶に水を入れ、葉っぱの向きも直した。

完璧である。

夏の日に緑が生い茂り、とてもきれいだ。
植物は心をすがすがしくする。

なんだ、やればできるではないか。
わからないだけで、やればちゃんとできるのである。

僕は何かに挑戦し、成し遂げる素晴らしさを知った。

同時にふと、昔テレビでよく見た
「はじめてのおつかい」
を思い出した。

外は暑く、風が少しだけ吹いていた。



しばらくすると、店長が外出から戻った。
ちょっと怒っているような、悲しんでいるような、
そんな顔をしていた。

「外のあれ、買ってきた?」
「はい、さっき花屋で、結構日持ちするみたいですよー」
「あれ、今すぐとって」
「ええー?なんでですか?せっかく買ったのに。暑いし緑きれいですよ」
「店の前に榊(さかき)なんて飾れないでしょ、何考えてんの?」
「え?あれ榊なんすか?」
「いいから、はやくとって!」

三階に飾るか?と聞いたら、馬鹿言うな、といわれた。



次の日、出勤したスタッフは

「え!? この流しにおいてある榊、どうしたんですか? 気味悪い!」

といっていた。

また次にきたスタッフも同じことをいっていた。


茶目っ気をきかせて、

「榊がきれいだったんでー、店に飾ってみましたー」

と言おうか迷ったが、恥ずかしいのでやめた。


僕は地蔵のように
地蔵のように堅く口を紡ぎ、

黙っていた。



榊は水を失っても元気よく、
しっかりと葉を茂らせていた。


ある、夏の日の午後のことであった。



夏の日に見たあの緑みどりなり  藻杏



category: 日々の事

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